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1.環境試験について

 環境試験の代表的なものとして、例えば、低温、高温、多湿など、温湿度環境の試験があります。この試験では、試験体となる製品、材料、塗装試験片などを、設定した温湿度環境の試験設備内に設置し、試験前後の試験体の性状変化から耐久性(耐環境性)を評価したり、機器の動作確認などを実施したりします。
 また、温湿度環境下の試験といっても、高温試験、低温試験、高温高湿試験、温度サイクル試験、温湿度サイクル試験、熱衝撃試験など、様々な種類があります。加えて、試験の内容や対象ごとに、公的規格や業界規格、あるいは自動車メーカーをはじめとした社内独自の標準規格など、数々の規格があるほか、温湿度条件も様々です。
 環境試験の代表的な規格の例を以下に示します。

電子機器 JIS C 60068-2-14 環境試験方法―電気・電子:温度変化試験方法
電子機器 JIS C 60068-2-78 環境試験方法-電気・電子:高温高湿(定常)試験方法
自動車部品 JIS D 0204 自動車部品の高温及び低温試験方法
鉄道車両部品 JIS E 4035 鉄道車両部品-高温及び低温試験方法
ゴム製品 JIS K 6257 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-熱老化特性の求め方
防衛電子機器 NDS C 0110 電子機器の運用条件に対する試験方法

 当社で実績が多い試験体としては、配電盤やキュービクル、バッテリーやモーターなどの自動車関連機器、鉄道車両用部品(インバーターや制御ボックス)があります。近年は、機器単体だけではなく、複数の機器を含むシステム全体での評価が増加傾向にあり、それに伴い環境試験の試験体の大型化、多様化が進んでいます。
 そこで当社は、小型から大型まで広範な試験体サイズに対応可能で、かつ幅広く温度を設定できる環境試験装置に対応するため、『環境発生装置』を導入しました。詳しくは第2章にてご紹介します。

2.環境発生装置のご紹介

 図1に今回導入した環境発生装置を示します。本装置は温湿度供給装置とも呼ばれ、温湿度を精密に制御した空気を供給できる装置です。通常の環境試験装置は、温湿度供給装置と試験槽の固定的な組み合わせで構成されています。それに対して新規導入の環境発生装置は、試験槽を自由に設計できる温湿度供給装置単体であるという特徴があります。すなわち、いろいろな試験槽を組み合わせることより、お客様のご希望に適した環境試験が可能となります。
 常設の大型試験槽(図2)を設置していますのですぐに利用可能です。その一方で、試験体に合わせて、常設の大型試験槽を改造、専用の試験槽を新規製作、も可能です。試験体サイズ、形状、数量に合わせ、棚を設置し複数の試験体を同時に試験する、配線や配管を通すための開口部を設ける、機械的負荷など別の試験を組み合わせる、といったカスタマイズによりお客様のご要望にお応えします。
 以下に環境試験装置と試験槽の仕様を示します。

【環境発生装置の仕様】
・温度範囲 -40~150℃
・温度変化速度 20℃→-40℃まで約150分、20℃→+150℃まで約150分
(鉄製500kg、内寸W2000×D2000×H2000mmの簡易な試験槽に接続した場合)
・湿度範囲 50~95%RH(at 40~85℃)
【常設の大型試験槽の仕様】
・試験槽内寸 W4500×D3000×H3000mm
・使用温度範囲 -40~+60℃
図1 環境発生装置の外観
図1 環境発生装置の外観
図2 常設の大型試験槽の外観
図2 常設の大型試験槽の外観
3.当社の環境試験設備について

 当社では今回導入した環境試験装置(環境発生装置)以外にも、環境試験設備として汎用的な恒温恒湿槽(小型試験体用)を6台所有しています。
 さらに、以下の通り、川崎重工グループが所有する大型環境試験室を利用する試験も対応可能です。
 表1に環境試験設備の仕様比較表を示します。

表1 環境試験設備の仕様比較表
環境発生装置
(今回導入設備)
大型環境試験室①
(川崎重工グループ)
大型環境試験室②
(川崎重工グループ)
小型試験体用
(一例)
温度範囲
[℃]
-40~150 -40~55 -70150 -40~100
湿度範囲
[%RH]
50~95 25~90 30~95 2098
試験槽内寸
(W×H×D)
[m]
4.5×3.0×3.0
※1
5.4×6.0×32 1.5×1.5×4.0 0.5×0.6×0.4
※1 常設の大型試験槽の場合。試験体に応じた特注も可能。

 環境発生装置以外の環境試験設備について、仕様および実施例を以下にご紹介します。

 (1) 大型環境試験室①(気候試験室)
【仕様】
 鉄道車両が1両丸々設置可能な、国内有数規模の大型環境試験室です(図3)。

  • 出入口寸法 W4.4m×H5.0m
    試験室寸法 W5.4m×H6.0m×D32m
    温度範囲 -40~+55℃
    湿度範囲 25~90%RH
    (温度により湿度調整範囲が異なります)
  • 図3 大型環境試験室①外観
    図3 大型環境試験室①外観

【実施例】
 ・車両の温湿度サイクル試験
 ・大型エンジンの低温作動性能確認試験
 ・低温環境下における車載センサ性能確認試験

 図4は、長さ約6m、重量約20トンの建設機械に搭載された大型エンジンの、低温環境下での作動性能確認試験の状況です。

図4 大型エンジンの低温作動性能確認試験
図4 大型エンジンの低温作動性能確認試験

 (2) 大型環境試験室②
【仕様】
 -70℃から150℃まで、幅広い温度範囲が特長の環境試験室です(図5)。

出入口寸法 W1.5m×H1.5m
試験室寸法 A仕様 W1.5m×H1.5m×D1.5m(内寸)、
B仕様 W1.5m×H1.5m×D4.0m(内寸)
温度範囲 A仕様 -70~+150℃、B仕様 -60~+120℃
湿度範囲 A仕様,B仕様とも30~95%RH(20~85℃で調湿が可能)
図5 大型環境試験室②外観
図5 大型環境試験室②外観

【実施例】
 ・ディーゼル発電機の温湿度サイクル試験
 ・バッテリーパックの環境試験

 (3) 恒温恒湿槽
【仕様】
 小型試験体用として手軽に利用できる恒温恒湿槽です。

【実施例】
 ・制御ボックスの温湿度サイクル試験
 ・パッキン用ゴム材料の湿熱劣化試験
 ・自動車用樹脂製めっき部品の熱サイクル試験

 図6は、お客様の製品の制御機器が収納されているボックスについて、適用規格に基づき、低温、高温、多湿を繰り返し曝した後の、制御機器の正常な動作を確認した試験です。

図6 制御ボックスの温湿度サイクル試験
図6 制御ボックスの温湿度サイクル試験
4.おわりに

 当社では、公的規格に準拠した環境試験だけではなく、お客様のご要望に合わせたオーダメイドの環境試験にも対応しております。
 環境試験のエキスパートとして、様々な試験体サイズや重量、環境条件に柔軟に対応できますので、ご相談ください。

 川重テクノロジーでは、今回ご紹介した信頼性評価試験をはじめ、様々な分析・計測・試験を通して、お客様へトータルソリューションを提供致します。
 「課題解決のためにどんな試験をすればいいかわからない…」
 「試験を検討しているが依頼先がよくわからない…」
というようなご相談もお気軽にお問合せください。

(2023/8)
トータルソリューション推進部 第三課
髙杦 宜実
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