1. はじめに
(1)品質マネジメントシステム(QMS)とは?
品質マネジメントシステム(QMS:Quality Management System)とは、文字通り品質をマネジメントするためのシステムを意味します。
もちろん、品質をマネジメントする仕組みは、製品やサービスを提供する企業が事業継続している限り必然的に内在しており、企業の発展と共に作り込まれてきたはずです。自動車メーカのQMSなどはその最たるものでしょう。
(2)QMSの国際規格
一方で、第二次世界大戦後、日本でも世界でもそれぞれ、QMSの仕組みに関する標準化、規格化が図られてきました。その中で、ISO9001とはISO(International Organization for Standardization)という民間団体が規格化したQMSに関する国際規格で、全世界で活用されている代表的な規格です。
2. 当社がISO9001を取得した経緯
(1)当社の業容拡大と品質マネジメントシステムの必要性
当社は1978年に川重分析センターとして設立されました。
当初は分析業務のみでスタートしましたが、時代の要請と共に、材料試験、振動計測、構造解析、受託研究、計器検定業務、電子・制御関連業務、IT関連業務と業容を拡大してきました。
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特に1990年代後半から、川崎重工グループの総合技術力を背景にした事業活動の展開に伴い、川崎重工グループからの分析、計測、材料試験、構造解析業務などが急増するとともに、川崎重工グループの量産製品に当社の電子・制御装置も搭載されるようになり、品質管理や品質保証の重要性がますます高まってきました。 |
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そのような時代の要請のもと、当社は、当社製品及び技術サービスの品質を保証し、品質に関する顧客の信頼を獲得するため、公に認められた品質マネジメントシステムを導入することを決意し、世界的に代表的な品質マネジメントシステムであるISO9000シリーズの認証取得を目指しました。
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(2)ISO9001規格の認証取得と変遷
簡単に認証を取得すると言っても1日でできることではありません。川崎重工出身のコンサルタントの支援を受け、1年以上に渡り社内のQMS体系を整備し、2000年8月に念願のISO9002:1994規格の認証を取得、さらに2002年9月にはISO9001:2000規格に移行しました。
その後は規格の改正に伴い、QMSの改善を図り、2009年7月にISO9001:2008規格に移行、2017年10月にはISO9001:2015規格に移行しました。
3. 不適合との戦い
〜 現場は甘くなかった 〜
(1)技術の高度化とノウハウの不足
2000年代に入り、川崎重工グループ製品の電子・制御システム化、メカトロ化の需要が急増しました。これに対応するため、川崎重工の本社研究開発部門から技術や人財を投入していただき、川重本社と連携して、相次ぎ電子・制御システム、メカトロシステム、画像処理システム、ICTシステムなどを開発し、川崎重工グループの製品に搭載しました。
具体的には、鉄道車両換気制御装置、鉄道車両台車異常検知装置、鉄道軌道検査装置、高速モータ磁気軸受制御装置、舶用ボイラ制御装置、遠隔監視システムなどです。
ところが、現場は教科書通りには行きません。我々には現場の様々な環境とその影響に関する経験やノウハウが不足していました。
(2)不適合の発生と技術ノウハウの蓄積による克服
例えば、鉄道車両台車異常検知装置では、導入後、加速度センサ処理装置の故障が相次ぎました。原因は、車体、台車の間で発生する接地電圧の変動により、高電圧が信号線に印加され、センサやそれに接続する処理装置が損傷したことでした。鉄道車両の電磁環境に対する知見が不足していたのです。
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具体的対策は割愛しますが、当社トップを交えて技術部門長、技術スタッフ、品証スタッフが集まって原因分析と対策に関する議論を重ね、現場で是正処置を講じ、その有効性が確認されるまでこれを繰り返すことで、最終的に不適合を解消することができました。
不適合で得られた貴重な知見は品証委員会で情報共有し、関連製品や他部門にも類似の不適合のリスクは無いか、更新すべきリスクは無いか、水平展開を図っています。 |
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4. 顧客満足の向上
〜 ワンランク上の技術サービス提供企業を目指して 〜
(1)急激に変動する市場環境への対応に向けて
当社は昨年(2018年)、創立40周年を迎えることができました。その間、1991年のバブル崩壊、2001年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショックなど、日本の産業界は苦しい状況下にありましたが、幸い当社の保有するポテンシャルは高く、ゆっくりですが成長拡大することができました。
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しかし、当社の製品・技術サービスが従来の延長線上のままでは、世界的に急激に変動する市場環境においては、遅かれ早かれ顧客から見向きもされなくなるのは必定です。
そこで当社は、経営トップのリーダーシップのもと「存在感のあるワンランク上の技術サービス提供企業」を目指して、事業活動と一体化したQMS活動の取り組みを実施してきました。 |
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具体的には、2015〜2018年度にかけて、以下の「品質目標」を設定し、取組んできました。
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品質目標 |
「顧客ニーズに適合し、顧客満足度の高い製品及び技術サービス品質」
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(2)顧客の真のニーズと期待の把握と顧客満足度の向上を目指して
顧客満足度の高い製品及び技術サービス品質を実現するにはどうすれば良いでしょうか?
まず、保有する製品及び技術サービスに対する顧客ニーズと期待項目の洗い出しから活動を開始し、顧客満足度の高い製品及び技術サービスを提供できるプロセスを構築する努力を継続しました。
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一方で、顧客満足を低下させるようなリスクを徹底的に排除するため、起こり得るリスク要因を洗い出し、排除すべきリスクに優先順位を付け、リスクを軽減したプロセスを構築する活動も実施しました。
これらの取組みの結果、当社の製品及び技術サービスに対する顧客満足度がより一層向上し、2018年度の顧客満足度アンケートでは9割以上のお客様から“今後も業務を依頼したい”、“他部門にも川重テクノロジーを推薦したい”という声を獲得することができました。 |
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また、このような品質目標による活動が評価され、認証機関による2018年維持審査では、“2015年規格に移行した企業のなかでは珍しく不適合は1件も見当たらなかった。”とのお褒めの言葉を頂きました。
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5. おわりに
〜 将来に向けた製品及び技術サービスの改善と
さらなる企業価値向上に向けて 〜
ISO9001は品質保証と顧客満足の向上を意図していますが、現在の顧客満足や要求品質は将来において拡大していくことが予測されます。一方で、企業の存続、持続的発展のためには、将来の顧客ニーズや期待に応えるための、製品及び技術サービスの改善は必須です。
そのため、当社では、2019年度、以下を新たな品質目標として活動を開始しました。
品質目標 |
「将来の顧客ニーズや期待を先取りするために改善が加えられた製品及び技術サービス品質」
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川重テクノロジーは、新しい付加価値が提供できる成長シナリオを描き、顧客本位のソリューションを提供できる企業となるため、川崎重工グループの一員として、企業価値向上に向け邁進中です。
企画本部 中野 康夫 |
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