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作業環境測定をご存知ですか?
 皆さん、作業環境測定という言葉をお聞きになったことはありますか?
 作業環境測定は、主に生産現場に従事される方々の健康を守るうえで、健康診断と同じく非常に重要な測定です。加えて、作業(職場)環境を把握する手法としても非常に有用です。
 作業(職場)環境を良い状態に保つことは作業従事者の健康維持につながり、その結果、製品の品質および生産性向上に役立つと考えられます。

 現在、当社では、表1で黄色表示した6種類の測定項目(粉じん・騒音・事務所則・特定化学物質・鉛・有機溶剤)について測定を請け負っており、川崎重工業様からは、ほぼ全ての工場よりご依頼を頂戴し、各生産職場での作業環境測定を行っています。
写真1 特定化学物質測定現場と当社機器分析室
作業環境測定の必要性
 作業環境測定の必要性について、少しご説明します。法令の話になってきますので、若干複雑ですが、できるだけ分かりやすくまとめてみました。

 まず、作業環境測定の実施については、労働安全衛生法(以下、安衛法と略します)第六十五条第一項にて【事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しておかなければならない】と定められています。

 ここで、注意が必要なのは、測定は『事業者の責務』であるということです。
 また、測定頻度については、『政令で定めるもの』とあり、表1に示しました通り定められています。
 なお、測定は事業者の責務ではありますが、各事業者が測定することは、困難であることがほとんどです。(国家資格である作業環境測定士が在籍していない場合や必要な測定・分析機器を所有していない場合など)
 そのため、当社のような測定機関が存在し、ご依頼に基づき各作業場の作業環境測定および作業環境評価基準に則った評価を実施し、事業者様へ結果をご報告しています。

 加えて、安衛法には、下記の通り、行わない場合の罰則規定も設けられています。

 安衛法第百十九条に【次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する】とあり、第1号には【第十四条、第二十条から第二十五条まで・・・、第六十五条第一項、第六十五条の四、・・・第百五条又は第百八条の二第四項の規定に違反した者】とあります。

 つまり、作業環境測定の実施は法令で定められており、行わない場合には、罰則まで存在しているのです。
作業環境測定を行うべき作業場について
 前述で、「作業環境測定というのは、法令で義務付けられていて、行わない場合は罰則まである。」ということが分かりました。
 そこで、ここでは、「どのような作業場が作業環境測定の対象となるのか?」について、ご紹介します。
 対象作業場などについては、公益社団法人 日本作業環境測定協会がまとめている表(表1)がたいへん分かりやすいので、そちらを抜粋してお示しします。


 本稿をご覧の皆さんの中には、私どもが試料採取のためにお邪魔している職場があるかもしれませんね。
表1 作業環境測定を行うべき作業場と測定の種類等(日本作業環境測定協会HPより)
作業環境測定を行うべき作業場 測定

作業場の種類
(労働安全衛生法施行令第21条)

関係規則 測定の種類 測定頻度
土石、岩石、鉱物、金属または炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場 粉じん則
26条
空気中の濃度および粉じん中の遊離けい酸含有率 1回/6月以内
  2 暑熱、寒冷または多湿屋内作業場 安衛則
607条
気温、湿度、ふく射熱 1回/半月以内
  3 著しい騒音を発する屋内作業場 安衛則
590、
591条
等価騒音レベル 1回/6月以内
  4 坑内の作業場 炭酸ガスが停滞し、または停滞するおそれのある作業場 安衛則
592条
炭酸ガスの濃度 1回/1月以内
28℃を超え、または超えるおそれのある作業場 安衛則
612条
気温 1回/半月以内
通気設備のある作業場 安衛則
603条
通気量 1回/半月以内
  5 中央管理方式の空気調和設備を設けている建築物の室で、事務所の用に供されるもの 事務所則
7条
一酸化炭素および二酸化炭素の含有率、室温および外気温、相対湿度 1回/2月以内
  6 放射線業務を行う作業場 放射線業務を行う管理区域 電離則
54条
外部放射線による線量当量率 1回/1月以内
放射性物質取扱作業室 電離則
55条
空気中の放射性物質の濃度 1回/1月以内
事故由来廃棄物等取扱施設
坑内における核原料物質の掘採の業務を行う作業場
特定化学物質(第1類物質または第2類物質)を製造し、または取り扱う屋内作業場等 特化則
36条
第1類物質または第2類物質の空気中の濃度 1回/6月以内
特定有機溶剤混合物を製造し、または取り扱う屋内作業場 特化則
36条の5
空気中の特別有機溶剤および有機溶剤の濃度 1回/6月以内
石綿等を取扱い、もしくは試験研究のため製造する屋内作業場 石綿則
36条
石綿の空気中における濃度 1回/6月以内
一定の鉛業務を行う屋内作業場 鉛則
52条
空気中の鉛の濃度 1回/1年以内
  9 酸素欠乏危険場所において作業を行う場合の当該作業場 酸欠則
3条
第1種酸素欠乏危険作業に係る作業場にあっては、空気中の酸素の濃度 作業開始前等ごと
第2種酸素欠乏危険作業に係る作業場にあっては、空気中の酸素および硫化水素の濃度
有機溶剤(第1種有機溶剤または第2種有機溶剤)を製造し、または取り扱う一定の業務を行う屋内作業場 有機則
28条
当該有機溶剤の濃度 1回/6月以内
黄色表示部:
現在、当社が受託している作業環境測定の項目
○印(1・6ロハ・7・8・10):
作業環境測定士による測定が義務付けられている指定作業場
※印(1・7・8・10):
作業環境評価基準が適用される作業場
a.粉じん(特定粉じん):
⇒ 研磨作業、表面処理(ブラスト)作業、鋳物成型作業、機械加工作業など
b.騒音(等価騒音):
⇒ 打鋲作業、成型作業、試運転作業、切断作業、機械装置稼働など
c.事務所則
d.特定化学物質
(特別有機溶剤・・・エチルベンゼン、メチルイソブチルケトンなど):
⇒ 混合撹拌作業、塗装作業、接着作業、溶剤洗浄作業、試験研究作業など
(第二類物質・・・弗化水素、重クロム酸、コバルト、カドミウムなど):
⇒ 表面処理作業、研磨作業、機械加工作業、試験研究作業など
e.鉛:
⇒ 精錬作業、溶接作業、破砕作業など
f.有機溶剤
(第二種有機溶剤・・・トルエン、キシレン、イソプロピルアルコール、酢酸ブチルなど):
⇒ 混合撹拌作業、塗装作業、接着作業、溶剤洗浄作業、試験研究作業など
作業環境測定の今後の動向
 化学物質規制に対する海外の動向を見てみると、規制強化へ向かう動きが強いように思われます。また、国内法規に目を向けてみても、同様のことがうかがえます。
 一方、作業環境測定に関する動向では、図1に示す通り特定化学物質の追加が近年増加傾向にあります。

 当社は、日本作業環境測定協会に所属し、情報の収集に努めています。また、新規対象成分に対する分析方法の確立なども積極的に実施しています。
図1 近年における特定化学物質の追加
 作業環境測定の対象作業場によっては、表1のように作業環境測定士の資格が必要な場合が多くあります。
 当社は、多くの作業環境測定士(1種・2種含む)を有し、厚生労働省での登録の基準を満たした作業環境測定機関ですので、サンプリングから測定・分析並びに評価結果のご提出まで問題なく行うことができます。

 皆さんの作業現場について、作業環境測定をご検討の際は、是非、当社 営業部または分析ソリューション部までご連絡ください。
問合せ先:
ソリューション事業部 分析ソリューション部
分析技術課 舩越 康嗣
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