自動車や鉄道車両などの輸送機器はもちろんのこと、家電、通信機器などの身近なものまで、ほとんどの工業製品は多かれ少なかれ粉じんが存在する環境で使用されており、中には人が立ち入ることができないような過酷な粉じん環境で稼働している製品もあります。
このような環境でも問題なく使用できるようにするためには、粉じん環境でも性能に影響がないこと、または密閉性が確保できていることを事前に確認しておく必要があります。
防じん試験とは、実環境を模擬する、またはそれ以上の粉じん環境に試験対象を暴露させて、その防じん性能または耐じん性能を確認するための試験です。
前述したとおり、防じん試験は多種多様な試験体が対象となります。代表的なものとしては、電気機器の外郭(配電盤やキュービクル)、自動車用部品(バッテリーやモーター)、鉄道車両用部品(インバーターや制御ボックス)等があり、カテゴリーごとに国内外で、規格が定められております。
当社では大型製品に対する防じん試験のニーズに応えるため、2007年度に気流循環式の大型防じん試験設備(旧設備)を導入し、2018年度までに100件を超える防じん試験を実施してきました。
また、更なるお客様からのニーズにお応えするために、2019年5月に大型防じん試験設備をリニューアルいたしました。
今回のリニューアルでは、旧設備の試験室よりも幅を700mm、奥行きを500mm拡大し、更に大型の試験室としました。約37m3の試験室容積は国内でも有数の規模を誇る大型防じん試験設備です。
自動車や鉄道車両用機器はもちろんのこと、大型配電盤や屋外用大型液晶パネルなども複数台設置できるサイズとなっています。
また、大型の試験体以外でも、小型の試験体であれば数百台単位で同時に試験を実施することも可能です。
公的規格では、それぞれの規格で使用する粉体が異なります。
防じん試験を実施している試験機関では、メンテナンス上の制約などの理由により、特定の粉体しか対応できない(=特定の公的規格しか対応できない)場合がほとんどです。しかし、当社の防じん試験設備は、自社での設計・製作によって、粉体交換時のメンテナンス性を高めることにより、各種公的規格やお客様のご要望に応じたあらゆる試験粉体に対応することができます。
規格試験準拠は当然ですが、当社ではお客様仕様の試験条件に対しても柔軟に対応しております。
前述したとおり当社設備は自社製ですので、ご要望の評価試験を実施するために設備の一部を改造し最適な試験方法をご提案することも可能です。
など、多岐にわたるお客様のご要望にお応えしてきました。
このように『その条件では試験ができません』ではなく、実現可能な試験方法をお客様とともに考えながら試験を実施していきます。
当社では、大型防じん試験設備に加え、2017年度に小さなサイズの製品を対象とした小型防じん試験設備も導入しました。
この小型防じん試験設備では、大型防じん試験設備と同じ気流循環式の試験に加え、「浮遊試験」(粉じんの吹付・撹拌⇔静置のサイクル試験)にも対応しているのが特徴です。
項目 | 大型試験設備 | 小型試験設備 |
---|---|---|
試験室形状 | 直方体 | 円筒状 |
試験室サイズ[mm] | W4300×D3000×H2900 | φ990×H900 |
試験方式 | 気流循環式・浮遊式 | 気流循環式・浮遊式・撹拌式 ・降じん式 |
・大型試験設備:浮遊式が対応可能になりました(2023/7)。
・小型試験設備:撹拌式・降じん式が対応可能になりました(2020/11)。
今回は、防じん試験、特にリニューアルされた大型防じん試験設備について詳しくご紹介させていただきました。
当社では、お客様の製品・材料の開発のために使用環境に応じた様々な受託試験、信頼性評価試験を実施しております。お困りの内容がありましたら、お気軽にお問合せください。
ソリューション事業部 トータルソリューション推進部 第三課 宮本 健二 |