はじめに
金属材料の多くは、製造プロセスや加工によって結晶の向きが特定の方向に揃う性質があります。
結晶の向きが揃った状態は配向や集合組織と呼ばれ、同じ組成の材料でも、配向性が異なると強度などの機械的性質が変化します。そのため、機械的性質とともに、材料の配向性を把握する必要があります。
配向の特性を利用した材料は、耐久性や加工性向上などのメリットがあり、航空機のタービン翼や自動車部品などに応用されています。
X線回折(XRD)は配向材料の評価に有効な方法です。ここでは、極点測定による配向評価についてご紹介します。
〈こんな場面にご利用ください〉
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- 圧延加工による集合組織の評価
- 3Dプリンター材料の配向状態の評価
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- 高配向材料の結晶方位の解析
- 熱影響による組織変化の観察
極点測定とは
極点測定は結晶がどの方向にどの程度揃っているかという配向性の評価手法です。X線回折装置では、回折角度を固定し、試料をステージ上で回転して回折強度分布を測定します。この分布図は極点図と呼ばれ、回折強度が高い方向に結晶の向きが揃っていることがわかります。
Al合金の極点測定
市販の圧延板およびアルミ箔について極点測定を行いました。
極点図(図1)において、板厚20mmは回折強度が全体に一様であるのに対し、板厚5mmおよびアルミ箔は回折強度が高い領域がスポット状に観測されており、配向した状態であることがわかります。また、図2の強度プロファイルから、アルミ箔は、板材に比べてシャープなピークが観測されており、配向性が高いことがわかります。