トピックス
 
1.はじめに
 残留応力とは物体に外力が作用すると、その物体にはひずみが生じます。この外力を取り除いても周囲の拘束によって残存するとこれが残留応力として作用します。一般に構造物に生じる残留応力はその部位の機能に対して有益になる場合と有害になる場合があります。
 有益な場合:圧縮残留応力による疲労強度向上(ショットピーニング、浸炭・窒化・高周波焼入の表面硬化処理)
 有害な場合:(主に)引張残留応力による疲労強度低下(溶接の変質部における疲労き裂発生原因の一つ)
 加工時の残留応力開放による形状変化(焼入品の加工後の予期せぬひずみ発生)
 このため、強度を重視した部品において、有害と成りえる危険個所の残留応力をあらかじめ知ることは非常に重要です。
2.残留応力を知る方法
 この残留応力を計測する手法としては、大きく分けて次の2つの方法があります。
種類 方法 長所 短所
破壊法 (逐次切断法) 計測したい箇所の周囲を切出・除去し、ひずみの変化量を用いて残留応力を計算する方法
  • 容易で正確
  • 測定対象の制限(大きさや材質)が少ない
  • 切断する必要がある
  • 切断のための時間と費用が大きい
  • センサー(ひずみゲージ)が切断中に損傷・剥がれる危険性がある
非破壊法 (X線応力測定法) X線等を用いて結晶体の格子面間隔の変化よりひずみ、応力を測定する方法
  • 非破壊での計測が可能
  • 測定範囲が小さい(深さは浅く領域も小さい範囲で計測できる)
  • 短時間で計測できる
  • 装置が高価
  • 装置が大きく据置型が基本(測定対象の大きさに制限がある)
  • 測定可能な材質が限定的(多結晶体)
【逐次切断法】
【逐次切断法】
【X線応力測定法】
【X線応力測定法】
 当社では破壊法と据置型X線応力測定装置を用いた非破壊法にて対応しておりましたが、非破壊にて短時間で計測可能である"非破壊法"の利点とご要望の多かった"現場対応"が可能となる「可搬式X線残留応力測定装置」を新規導入し、運用を開始しました。
3.可搬式X線残留応力測定装置について
 当社で導入した可搬式X線残留応力測定装置は、センサー部が軽量で持ち運びが可能で、現場に出向いて直接大きな対象物を計測することができます。
【装置外観】
【装置外観】
装置諸元
装置名 パルステック工業(株)製「µ−X360n」
計測方法 COS α法
コリメータ径 2.0、1.0、0.3mm
X線管球ターゲット Cr
測定可能材質 鉄鋼材料(炭素鋼・合金鋼)、純ニッケル及びニッケル基超合金、アルミニウム及びアルミニウム合金
測定時間 標準約90秒
4.出張測定による事例
  • 大型歯車
  • 大型溶接構造体
  • 大型ディーゼルエンジンクランクシャフト 等々
 基本的にはセンサーのX線照射部分を測定対象面に対して35°若しくは45゜傾かせて固定することができれば、どのような向き・大きさでも計測可能です。弊社では写真に示したような小型・軽量で位置合わせが安易に可能な専用昇降機をはじめ、各種取付治具を準備しており、上記した測定事例以外の対象物も計測可能です。
5.おわりに
 残留応力測定にお困りでしたらお気軽にお問合せ下さい。
(2017/7)
メカコンポーネントソリューション部 第二課
高橋 俊光
お問合せはこちらから