焼入れ部の境界付近における引張残留応力の発生
焼入れ部では、主にマルテンサイト変態に伴って比較的大きな圧縮応力が残留することが知られているが、これに対応するようにその境界付近に引張応力が現われる。実際には下図に示したように、焼入れ部の境界(焼き境)から4mm程度離れた位置で最大引張応力が発生するため1)、例えばギヤの歯部において耐摩耗性を得ようと高周波焼入れ等を施工するが、歯部のみでかつ焼き境が歯底R部から4mm程度離れた位置になると、歯底R部での応力集中に加えて引張応力が残留するため、歯底R部の疲労強度が低くなりやすい。この場合はコイル形状の課題もあるが、歯底R部まで焼入れ範囲とすることが望ましい。
参考文献:1)小林幹和,熱処理,38,P.255(1998)
(2006/11/16)