技術分野

材料評価

技術レポート

極低温衝撃試験

 液化ガスが使用されるような極低温環境を含め、低温環境で鋼材は脆くなることが知られています。当社では-269℃(4K)といった極めて低温でも試験可能な衝撃試験技術を有しています。
 一般に、金属材料の特性評価には、静的強度(引張、圧縮、曲げ)や疲労強度、材料の硬さや、金属組織の確認などが一般的に行われますが、材料の粘り強さ、あるいはもろさを評価する手法として規定されていますのが衝撃試験です。特に構造用鋼材料の低温脆性や、低合金鋼の焼き戻し脆性などを評価する簡便な方法として衝撃試験は利用されています。
 当社では材料の各規格に適合した試験片形状の選定、加工から、試験温度も極低温(液体ヘリウム温度)から高温までの広い範囲での衝撃試験に対応し、多数の実績を有しています。

1.衝撃試験とは

シャルピー衝撃試験
(金属材料強度試験便覧より引用)

 衝撃試験には振子式、落錘式などがありますが、一度の衝撃で試験片を破壊し、試験片が破壊するまでに吸収するエネルギーの大きさを求めて、材料の粘り強さを求める試験方法です。 一例として、振子式のシャルピー衝撃試験機の概略形状を右図に示します。試験方法はハンマーにより試験片に衝撃荷重を与え、最初に設定した振子の持ち上げ角度と、試験片を破壊した後に反対側に振り上がった振子の角度を読み取り、試験片の破壊に費やしたエネルギーを求めることができます。

シャルピー衝撃試験
(金属材料強度試験便覧より引用)

2.衝撃試験機

 当社で所有している衝撃試験機は2機です。

型式:シャルピー衝撃試験機
容量:294J
規格:「JIS B 7722シャルピー振子式衝撃試験-試験機の検証」に準拠して据付・検証
検定:日本海事協会殿(検定周期1年)

  • JISに準拠した一般的な
    衝撃試験に適用
  • 液体水素温度(20K)および液体ヘリウム温度(4K)の
    衝撃試験に適用

3.測定条件

 「JIS Z 2242 金属材料のシャルピー衝撃試験方法」に準拠して試験片を製作し試験を実施します。

(試験温度と温度調整)
 
1000℃~200℃
電気炉
200℃~常温
シリコンオイルとオイルバス
0℃~-70℃
アルコールとドライアイス
-70℃~-155℃
イソペンタンと液体窒素
-196℃
液体窒素
-253℃(20K),-269℃(4K) 
液体ヘリウム

4.試験により得られる結果

 シャルピー衝撃試験により得られる衝撃特性値は次のとおりです。

  • シャルピー吸収エネルギー(J)
  • シャルピー衝撃値(J/cm2)
  • 破面率(%)
  • 横膨出量(mm)
  • 遷移温度曲線(遷移温度)

遷移温度曲線の一例
(金属材料強度試験便覧より引用)

 金属材料では温度の低下とともに、伸びや絞りなどは減少しますが、この脆化する温度を衝撃試験により評価すことができます。材料によっては温度を変えて衝撃試験を行うと、ある温度以下で急激に衝撃値の低下する温度領域が確認されます。
 この低温での脆化現象の生じる温度が遷移温度と呼ばれ、破断面の延性破面と脆性破面の面積を観察して、脆性破面の割合が50%を破面遷移温度と定義されています。

5.試験の適用

 当社における衝撃試験は低温で行なう場合が多く、低温配管やLNGタンクの溶接部の低温脆性を評価し、設計・施工に対してデータを提供しています。極低温衝撃試験に関しましては、ロケット燃料としても利用される液体水素(20K)や最先端のエネルギー機器関連(4K)への適用実績があります。