当社では、ボイラ等の高温・高圧部材の余寿命判定技術の一つである「非破壊検査法」により、各種材料について多数の損傷診断を実施してまいりました。
ここでは、特にクリープ損傷に対するボイラの余寿命診断技術の一部である「レプリカ法」と「硬さ測定法」についてご紹介いたします。
1.レプリカ法
対象部材の組織や割れ・ボイドなどの損傷形態を非破壊的に観察する方法で、採取したレプリカを用いてクリープ損傷の進行状況や組織の変化などを把握できます。
レプリカ法を用いたクリープ損傷診断技術の具体的な手法については次のようなものがあります。
- クリープボイド観察による評価:全粒界数とボイド損傷粒界の比率を算出する「Aパラメータ法」など
- 結晶粒変形法:結晶粒のアスペクト比を測定する「フィレ径比」による評価など
- 組織対比法:粒界炭化物粒径やセメンタイト分解状況の標準組織との比較評価など
たとえば、3.組織対比法のうち、STPA22等の低合金鋼母材部においてよく用いられる方法が「粒界炭化物粒径計測法」です。これは、クリープ損傷の比較的初期に生じる粒界三重点付近の炭化物の成長に着目した方法で、レプリカ法によって観察された粒界炭化物の粒径を画像処理装置によって測定し、マスターデータと比較することで寿命消費率(※)を評価します。
- 寿命消費率:材料がクリープ損傷などのダメージを受けたときのダメージ蓄積量の割合を示す。
材料が未損傷の場合を0%、クリープを起こして破断に至る状態を100%として、クリープ試験等によって求めたマスターデータをもとに決定している。
2.硬さ測定法
材料の硬さがひずみや温度の履歴を受けると変化する点に着目して、実構造物の部材の硬さを測定し、マスターデータと比較検討して寿命評価する方法が硬さ測定法です。
当部では、非破壊で硬さの測定が可能な「超音波硬度計」を使用し、硬さ測定法による余寿命評価を実施しています。
以上2つの各手法を用いて判定された損傷量について総合的に考察し、クリープ損傷の総合評価を行い、調査対象物の余寿命判断を実施しています。