実構造物の強度評価は、有限要素法(FEM)による構造解析計算で発生する応力を求め、材料強度あるいは溶接継手強度データなどと比較する方法と、構造物実体を供試体として、実体が受ける荷重を模擬した試験により、その強度を確認する方法があります。目的により、両者を使い分ける、あるいは両者を並行して実施することで、強度評価の精度や効率をより高めることも可能です。
実際の構造物は、1箇所だけ、あるいは1方向だけの力を受けるとは限りません。例えば、鉄道車両の台車は、自重あるいは乗客の重量を鉛直に受けるほか、加速・減速による力を前後方向から受けます。また、カーブを曲がるときには、遠心力を横方向に受けるなど、複雑な荷重が、台車の各部に受けます。
また、航空機の翼は、空気力の他、機体あるいは翼を構成する他の部材との間での力のやりとりにより、複雑な荷重を受けます。
ここでは、複数のアクチュエータを使用したり、負荷方法を工夫して、実際の構造物が受ける荷重を模擬した試験を行う技術を紹介します。
1.鉄道台車の多軸疲労試験
試験システムを用いて、複数の様々な能力を持つアクチュエータをコントロールします。実稼動年数に対応する繰返し負荷をかけて、設計寿命に耐用することを確認する試験です。
適用事例
- 米国向け車両台車
- 国内向け車両台車 他
鉄道車両台車の疲労試験の例として、米国向け車両の台車の疲労試験を行った時の状況を示します。
この試験では、川崎重工の技術研究所殿の設備を用いて、10台以上のアクチュエータをコントロールして疲労試験を行い、実稼働年数に対応する繰返し負荷をかけて、設計寿命に耐用することを証明しました。川重テクノロジーの設備でも最大5台のコントロールが可能です。
2.航空機補助翼の強度試験
航空機翼は、翼全体に分布して空気力を受けるため、それを模擬した荷重を負荷する必要があります。負荷用パッドを翼の縦横に配置し、空気圧の分布を再現するようトーナメントと呼ばれる天秤状の治具で、負荷を与えています。
(1)小型機補助翼の強度試験
(2)旅客機用ウイングレットの強度試験
この他にも、航空機機体パネル、ヘリコプタ回転翼部材、鉄道車両の車体パネル、鉄道や道路橋の桁や橋脚など、当社では多数の構造物の強度試験、疲労試験の実績があり、お客様のニーズに応える技術と設備を保有しております。