当社は、川崎重工業、川重マリンエンジニアリングと共同で、舶用推進技術、船舶流体技術、システム制御技術の融合を図って開発した「DPS自動操船システム」の製品化を進めてきました。
ここでは、当社が主体となってソフトウエアの開発から現地設置及び最終調整まで実施しましたシステムの概要と適用例を紹介します。
1.システムの構成
制御装置(製品名:KICS-5000)は、図1に記すような冗長化制御システムを用いており、主系に何らかのトラブルが発生した場合には自動的に従系に切り替りバックアップが可能な構成となっています。
さらに、旋回スラスタ(レックスペラ)との信号の入出力に関して、二重化した通信線で接続することにより高い信頼性を実現しています。
2.システムの機能
本システムは、非線形要素が強い船体運動やスラスタに対して、モデルベース制御技術であるオンライン非線形最適化制御や最新のGPS利用技術を適用することにより、以下のような高度な自動操船機能を有しています。
(1)定点保持機能
目標対象位置に対して船位(位置および船首方位角)を保持するよう、オンラインで最適な指令値を計算しながら自動操舵を行う機能。
(2)ルートトラッキング機能
複数の目標通過点を設定し、その間をオンラインで最適な軌道を計算しながら自動航行する機能。
(3)最適推力配分機能
旋回式スラスタの所要パワーが最小となるように推力配分を行い、万が一スラスタが故障した場合には残りのアクチュエータで自動的に推力配分を行う機能。
(4)二重化自動切り換え機能
(5)オンライン航路予測表示機能
現在時刻から一定時間将来の船体挙動予測を行い、画面上にその予測航路を表示する機能。
図2に、KICS-5000制御装置とオペレーション画面を示します。
3.適用例
海底ケーブル布設工事に適用した例を図3に示します。本工事では、海底地形が複雑で、潮流が速く変化する海域でのルートトラッキングが要求されましたが、計画ルートに対して誤差約1m程度と高い精度で工事支援をしました。
このようなケーブル布設等の海洋工事では、深海底域、岩礁海域での作業に対応する必要があります。また同時に、昼夜連続作業での作業の効率化、および省人化・省力化が求められており、DPSの需要が拡大するものと考えられます。