“見えないものを見えるようにする”。
この手段となるものが可視化手法であり、可視化手法は様々な種類、分野にわたっています。
様々な可視化方法がある中で、今回取り上げるのは、高速度カメラを使った可視化手法です。
高速度カメラは、人の目や一般のビデオカメラでは見ることができない速い動きを撮影し、スローモーション映像として記録することができます。
“動きが速すぎて見えないものを、見えるようにする”。これが“高速度カメラによる可視化”です。では具体的に“高速度カメラによる可視化”の例を紹介します。
1.トラブル原因の究明例
自転車の変速時、“ガリガリ”という音を伴って変速がうまくいかなかった経験をお持ちの方がいるかと思います。
この例では変速時の様子を高速度カメラで記録し、そのスローモーション映像から、変速不良の原因究明を行いました。
図1が人の目で見た映像で、図2が高速度カメラによるスローモーション映像です。
変速時の様子が、図1では“速すぎて見えない”のが、図2では“見えるように”なっており、変速時にチェーンが大きく波打っている様子がわかるかと思います。
これが変速不良=トラブルであり、場合によってはチェーンが外れる危険があります。
トラブル原因を究明する際、何度でも再生可能な記録映像は大変役立ちます。映像の中で何度でもトラブルを再現できるからです。
また、最近ではデジタルカメラ同様、高速度カメラも高解像度化が進んでおり、トラブル箇所の特定が難しい場合は、とりあえず全景を記録し、撮影後に拡大観察することによってトラブル箇所の特定が可能になります。
この例では拡大観察の結果、変速時にチェーンとスプロケット(チェーンがかかる歯車)がうまく噛み合っていないことがわかりました。(図3参照)
これが変速不良=トラブルの原因であり、スプロケットの磨耗やチェーンの不具合(伸び、リンクの固着)が要因であると考えられます。
2.動体の運動解析例
高速度カメラの記録映像は、運動解析ソフトと組み合わせることにより、移動量、速度、軌跡などの定量値を算出することができます。
この例では電卓に貼り付けたマーカーを運動解析ソフトに追跡させることにより、電卓の落下時の軌跡、移動量から算出される加速度(衝撃吸収の目安)を表示しています。
なお、この例にある落下時の運動解析以外に、振動、回転、衝突、破壊、飛翔体など様々な動体の解析が可能です。
3.センサとの組合せ例
高速度カメラの記録映像に、圧力、ひずみなどの各種センサを組み合わせることにより、トラブル原因の究明や様々な現象の解析を効率的に行うことができます。
この例では、飛翔体が衝突した時の金属ケースのひずみ具合(ひずみゲージによる)を記録映像と同期させて表示しています。
なお、この例にある衝突現象以外に、回転体の破損、振動など様々な現象に対応させることが可能です。
4.最後に
当社には計測、材料、解析の専門家が在籍しています。高速度カメラと組み合わせることにより、より高度な解析やアドバイスを行うことが可能です。