X線光電子分光分析装置(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy、別名ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)は、X線を物質表面に照射し、表面数ナノメートル領域より放出される光電子のエネルギー測定により物質表面の構成元素、化学結合状態の分析を行います。
ESCAとは:
- 検出器は、静電半球型エネルギーアナライザと静電レンズの組合せによりエネルギー軸精度±0.05eVが得られます。
- X線源は、Mg/AlツインアノードでMg:500W、Al:600Wが得られ、X線モノクロメータが使用できます。
- エッチング室と分析室が独立しているため、数nm~μmオーダーの深さ方向分析が可能です。
高性能な全反射機能を持つXPSにより、極薄膜の極微量元素分析(定量、化学結合状態分析)が可能です。
本装置を用いて、以下のような分析・測定業務を実施しています。
- 材料開発: 金属、電子・半導体、高分子、無機化合物、触媒など材料の表面・深さ方向評価分析
- 故障解析: 各種材料の腐食、変色、酸化、濡れ性などの原因解明
- 製造工程管理: ハードディスク潤滑剤膜厚、半導体表面汚染物質などの管理
例えば、図1、2は、表面処理したステンレス鋼の測定例です。
図1は、深さ方向の元素分布を表したグラフであり、表面直下にクロムリッチな層が存在すること、酸化膜の厚みが約50Åであること、などの表面近傍状態を示しています。
図2は、鉄の結合状態の変化を深さ方向に表したグラフであり、鉄の結合エネルギーが、表面と内部で変わっており、表面は酸化物、内部は金属と同定できます。
- 【図1 深さ方向の元素分布】
- 【図2 ナロースキャンスペクトル】