近年ゴミ焼却場から排出される焼却灰や飛灰を処理する最終処分場の不足が問題となっています。そこで、灰の無害化・減容化対策として、高温溶融処理による灰の溶融スラグ化が積極的に取り入れられています。
溶融スラグは、アスファルト舗装の骨材や、コンクリートと混ぜて道路側溝ブロックやテトラポットなど幅広い用途に再利用されています。しかし、この溶融スラグ中に金属アルミニウムが含まれていると、セメントのアルカリと反応して水素が発生し、コンクリートのひび割れの主原因になります。よって再利用される溶融スラグ中の金属アルミニウム含有量の把握は、極めて重要になりますが、JIS規格などでも決まった定量法は無い状態でした。
当社は、化学分析で培った経験を基に、金属アルミニウムの添加回収試験を繰り返し、溶融スラグ中の金属アルミニウムの定量分析法を確立したので、紹介します。
1.溶融スラグとは
溶融スラグとは、溶融炉において約1,400℃の超高温で焼却灰等を溶融した結果、生成されるガラス質の固形物です。そのうち、水で急冷破砕したものは水砕スラグと呼ばれています。
添加回収試験
金属アルミニウムを含有しない溶融スラグに、粉末状金属アルミニウムを添加後、各種溶解試験を行った結果、臭素メタノール溶液を用いた溶解法では、金属アルミニウムはほぼ100%回収できることを確認しました。又、同時にブランク試験による定量限界の検討も実施し、信頼性の高い定量分析法を確立しました。
2.分析法・概略 臭素メタノール溶解 - 誘導結合プラズマ分析法
溶融スラグを臭素メタノール溶液の一定条件(濃度・時間・撹拌)で溶解すると、溶融スラグに含まれる酸化アルミニウムは溶解せず、金属アルミニウムを分別溶解することができます。この溶液をろ過し、メタノールを蒸発させ、酸性溶液に置換後、誘導結合プラズマ発光分光装置(ICP-AES)にて、アルミニウムの定量分析法を行います。
測定範囲 0~5% 定量限界 0.005%