物質は、加熱や冷却により化合形態や結晶構造が変化します。例えば、炭酸塩や水酸化物は高温に加熱すると酸化物に変わり、鉄は加熱や冷却によりα鉄、γ鉄などに結晶構造が変化します。このような変化を高温X線回折装置により観察することができます。
X線回折法とは
X線を試料(結晶性物質)に照射することにより、起こる回折現象を利用して、その物質の化合形態や結晶構造を求める分析手法です。
高温X線回折法とは
高温に保持した状態でX線回折測定を行います。加熱や冷却によって化合形態や結晶構造が変化する物質について、その変化を観察することを目的として行います。
特長
- 半導体検出器による超高速(数分)の測定が可能です。
- 室温から1200℃までの測定が可能です。
- 昇降温速度、保持時間の設定が可能です。
- 各種ガス雰囲気での測定が可能です。(腐食性ガス、有害性ガスは不可)
測定例 ―低融点物質の生成―
塩化カリウム(KCl)と塩化亜鉛(ZnCl2)を混合して、温度を変化させて測定した例を示します。30℃では塩化カリウムと塩化亜鉛の状態で存在しますが、200℃に昇温すると複塩(K2ZnCl4)が生成します。300℃では回折ピークが消えていることから複塩が溶解したと考えられます。この測定から、塩化カリウム(融点776℃)と塩化亜鉛(融点365℃)から低融点物質(K2ZnCl4)が比較的低温で生成することが判りました。更に、測定温度の間隔を細かくすることで、生成する温度も知ることができます。
以上のように、温度によって形態が変化するものに適用できます。
例えば機器に使用する部材が熱影響によって形態が変化する場合の測定に最適です。その他、相転移の測定、固溶の測定、熱分解反応の追跡等が行えます。