「メンテナンスには、できるだけお金をかけたくない」だから、使えるとこまで、使って壊れたら交換。しかしこの方法が通用しない場合が多いのが現実です。そこでこれまでは一定期間運転したらオイル交換やオーバーホールを行うなど、TBM(Time Based of Maintenance:時間基準保全)による管理が行われてきました。そして現在、CBM(Condition Based of Maintenance:状態監視保全)へと移行しています。状態を見ながら使えるところまで使って、必要なメンテナンスを行うという、理想的な管理を行うための診断技術の一つとして、フェログラフィ分析は発達してきました。
この分析方法から何が得られるのかを、ここでは紹介します。
1.フェログラフィ分析の概念
機械が正常状態で運転されているときには、磨耗粉の粒子径は小さく(一般に5μm以下)、量も一定のごく低い値を示しますが、異常状態が始まると粒径の大きな粒子が徐々に増加し、その後急激な増加を示します(図1参照)。そのため数μm程度までの金属を定量するSOAP分析では現われにくい、数十~数百μmの粒子の変化を定量フェログラフィによって観察し異常を早期に検知します。
2.定量フェログラフィ法
定量フェログラフィ法は磨耗粒子の量的な変化を把握するための分析法で、写真1のDRフェログラフ装置を用います。この装置の原理を図2に示します。機械から採取した試料油を溶剤で(n倍に)希釈したのち、本装置のプリシピテータチューブに導入します。このチューブ内で、試料油中の磨耗粉は磁場勾配を持った磁石によって粒子の大きさの順に配列されて沈着します。この大粒子側(主に5μm以上)の密度(DL)と、小粒子側(5μm以下)の密度(DS)を光学的に検出します。
DLとDSはそれぞれ光学的密度で、磨耗粒子の面積被覆率が50%のときの値を100として換算表示した無次元数値です。
異常の有無を診断するための評価値として、一般に「全磨耗粒子量〔n(DL+DS)〕」、「大磨耗粒子量〔n(DL-DS)〕」および「磨耗危険指数〔n2(DL+DS)(DL-DS)〕」などが使用されています。これらの評価値を用いての異常判断基準は機種や部位によって異なりますが、定期的で継続的な観察によって異常を早期に発見することができます。
3.分析フェログラフィ法
分析フェログラフィ法は磨耗粒子の形状、色などの変化を把握するための分析法で、定量フェログラフィ分析により要注意または異常が検出された試料油について、写真2のフェログラフアナライザーを用いてフェログラムを作成します。
試料油を溶剤で希釈し、磁石上にセットしたガラス上に流すと、試料油中の粒子には重力と磁力が作用し、粒子の大きさや材質の違いによって分離され、ガラス上に沈着します。
これをフェログラムと呼び、この粒子の形状、色、表面の状態などを光学顕微鏡を用いて観察することによって、磨耗発生の来歴を推定します。顕微鏡写真の一例を写真3、4に、磨耗粉の代表的な形状とその来歴例の関係を表1に示します。
また、フェログラムをホットプレートで加熱処理した時における磨耗粉の色の変化や、偏光観察による粒子の輝き具合により組成や材質を推定することもできます。
粒子名称 | 形状・大きさ | 主な発生原因 |
---|---|---|
正常磨耗粒子 | 平滑 0.5~5μm | 表面薄層の剥離 |
切削磨耗粒子 | カール状 25~100μm | 砂粒等の混入 |
球状粒子 | ボール状 1~5μm | 軸受の疲労 |
平板状粒子 | 平板状 20μm 以上 | 歯車の疲労 |
シビアスライディング粒子 | 直線状のエッジ 20μm以上 | 片当り、 高荷重 |
その他の粒子 | 様々な形状 | 砂粒、繊維くずの混入 |
以上の様に、フェログラフィ分析は、機械を分解せずに機械内部の主に摩擦部分の状態を把握し、故障を予知・診断できる技術で、機械の潤滑管理やCBMを進める有力なツールになります。
当社では、建設機械やガスタービン、陸・舶用ディーゼルエンジン等で蓄積されてきた知識を最大限に活かして、お客様のメンテナンスのお手伝いをさせて頂きます。