熱流動解析関連の受託解析は輸送用機器及び産業用機器を中心として増加の傾向にありますが、ここでは船舶関連の熱流動解析の例として、株式会社川崎造船殿からのご依頼によるオイルタンク内の熱流動解析についてご紹介します。
図1(a)に示すダブルハル(D/H)オイルタンカーは、満載航海中に二重底バラストタンク内の空気層が断熱層となるため、図1(b)に示すシングルハル(S/H)オイルタンカーの場合よりも保温効果が高くなる(一種の魔法瓶効果)と言われています。
そこで、魔法瓶効果を確認するため、非定常熱流動解析を行いました。
その結果の一例を図2で3週間後(21日後)のタンク内における温度分布の解析結果を示しました。その結果によると、D/Hオイルタンカーのタンク内温度は、S/Hオイルタンカーの場合に比べ温度が高く保持されている。
また、本解析手法の妥当性を検証するため実機による計測値との比較を行いました。
図3に計算値と解析値の比較図(16日後までの比較例)を示しますが、タンク内位置の①及び②の個所における温度差は、4日までは非常に小さく(1°C程度)、それ以降は少し大きく(2°C程度)なるが、16日以降ではまた小さく(1°C程度)なり、本解析手法が妥当であることが確認できた。
今回の解析により、D/Hオイルタンカーの魔法瓶効果が実証でき、その挙動を把握することができました。
(参考文献)
平成14年3月 財団法人 日本造船研究協会 SR242
原油タンカーの新形コロージョン挙動の研究 成果報告書