地震応答解析では、一般的に各モードに減衰比を設定するモード減衰を適用して、各モードの応答を求めた上で、それらの重ね合わせで全体の応答を評価するモード法を適用することが多いです。しかしながら、弾塑性挙動を考慮するなどの非線形解析では、直接法を適用することになり、モード減衰が使用できない直接法の解析では、一般的にレーリー減衰が用いられます。ここでは、そのレーリー減衰について説明します。
構造物の動的応答解析を行うときに、減衰特性の設定によって解析結果が大きく変わります。減衰のモデル化については、質量や剛性のように理論的に求めることが困難であり、またできたとしても非常に複雑なものとなります。それに対する一つの簡便法として、以下のような質量マトリクス と剛性マトリクス
の線型和として減衰マトリクス
を定義するレーリー減衰という考え方があります。
その考えを基に2つの固有振動数、モードを選択し、次式により2つのパラメータ を決めます。
ここに、
:m次、n次の固有各振動数
:m次、n次のモード減衰定数
このようにして設定した減衰は、振動数に対して図1に示すような関係があります。
図1 振動数と減衰の関係
道路橋示方書・同解説では、固有振動解析結果を用いて部材ごとの減衰定数からモード減衰を算出し、2つの着目する固有振動モードから、レーリー減衰による全体の減衰を設定する方法を示しています。
その方法を基に、実験計測などによりモード減衰定数を求め、固有振動解析結果から、地震応答に影響が大きいと考えられるモードの振動数域を含むように2つの固有振動モードを選定して、レーリー減衰を求めます。
たとえば、想定される減衰定数 =0.02、
=0.02、有効質量が大きい主要なモードの固有振動数を
=0.2Hz、
=2.0Hzの間に含むように設定した場合、式(2)より、
=0.04570、
=0.002894となり、図2に示すようなレーリー減衰となります。
図2 レーリー減衰の具体例
図2より、地震応答に影響が大きい主要なモード(0.2Hz~2.0Hzに存在)に対して、減衰が過大とならない安全側の設定となっていることがいえます。また、低周波側では (質量比例)が、高周波側では
(剛性比例)が支配的になっており、解析上、不要な振動成分をフィルタリングすることもできます。
1) 戸川隼人、有限要素法による振動解析、サイエンス社、1975
2) 日本道路協会、道路橋示方書・同解説 V.耐震設計編、丸善出版、2012
3) 日本道路協会、道路橋示方書・同解説 V.耐震設計編に関する参考資料、丸善出版、2015